リバースモーゲージ

2007年 03月 20日 (火) | Category : 介護施設

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

住み続ける資金借りる


住み慣れた家で暮らし続けようというお年寄りの助けになるのが、宅地を担保に生活費を借り、死後に清算する「リバースモーゲージ」だ。徐々に制度を導入する自治体や金融機関が増えているが、長生きをした場合の対応などが課題となっている。(内田健司)


宅地担保に1千万円


JR三鷹駅からバスで10分ほどの東京都武蔵野市内に、駒場啓三郎さん(74)が、和菓子店舗を兼ねた2階建て住宅を建てたのは、東京五輪の翌年の1965年。5年前に脳こうそくで倒れたのを機に店を畳んだ。一昨年には妻をみとった。左手足に不自由さが残るが、介護保険の認定は要介護1。介護サービスを利用しながら、一人で暮らす。


収入は国民年金が月約7万円。妻の年金も合わせて光熱費や水道代を払っていたころには気にしなかったが、生活がだんだん厳しくなるのを感じ始めた。そこで、2005年9月、36平方メートルの宅地を担保に、1000万円までの借り入れが可能な金銭消費貸借契約を武蔵野市福祉公社と結んだ。


3か月ごとに15万円の支給を受けている。一時は住み替えも考えたというが、「家賃もかからず、住み続けられるならと制度を利用することにした」と駒場さんは話す。


武蔵野市は1981年、福祉資金サービス事業として、全国初のリバースモーゲージを開始した。これまでに100世帯余が利用している。ソーシャルワーカーや看護師が月1回訪問したり、救急時に対応する福祉サービスの利用料として、月1万円が別途差し引かれるほか、貸付額の利子(長期プライムレート金利相当、06年度は年2%)も必要だ。借り入れが上限額に達した場合は原則として、一括返済を求められる。駒場さんは、「借り終わったらどうしようかという不安がないわけではない」と漏らす。


医療費の心配不要に


同市内の松永いしさん(76)も昨年11月、宅地約71平方メートルを担保に2600万円を上限とする契約を結び、月額8万円を借りることにした。


夫を亡くして10年余、一人暮らしを続けている。昨年、年上の知人が入院。「自分も病気になったら、どれだけ医療費がかかるのか」と不安にかられたのが、申し込むきっかけとなった。「出来ることは全部やろうと思っています。安心したせいか、人相や性格も変わったと、知り合いに言われます」と声を弾ませる。


課題は長生きリスク


リバースモーゲージをめぐっては、一類型である「長期生活支援資金貸し付け制度」を全国の都道府県社会福祉協議会が導入する一方、ここ数年、一部金融機関や住宅メーカーが顧客対策として導入を始めた。富裕層を対象に2年前に導入した中央三井信託銀行では、担保不動産の土地評価額の下限を、当初の1億円から4000万円に緩和するなどして、利用件数を80件に伸ばした。


しかし、原則として宅地が担保で、地価の高い都市部などに限定されているほか、本人が想定する以上に長生きをして、上限額を超えた場合のリスクもあり、利用者はまだまだ少ない。


長谷工総合研究所の吉村直子主任研究員は、「より多くの利用者にとって使いやすくするためには、限度額を使い切ってしまった場合の住み替えに対応できる仕組み作りなど、公的支援の枠組みを構築すべきだ」と話している。


読売新聞
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