共生型住居
在宅医療活用 最期まで生活
高齢者が気の合う仲間と支え合って暮らす、共生型のグループリビングが注目を集めている。がんを患った入居者を看取(みと)るなど、在宅医療の取り組みも始まった。(大津和夫)
10人が共同生活
「まだ新幹線に一度しか乗ったことがないわ」「あら、天国に行く時、コンコルドで行けるからいいじゃない」――。笑いがはじける。
神奈川県藤沢市のグループリビング「COCO湘南台」の雰囲気はいつも明るい。設立は1999年。現在、94歳までの高齢者10人が個室に住み、共同生活を送る。
食堂で夕食を全員で取るのが唯一の決まり。起床時間も、どこへ行くのも自由だ。調理と掃除は地元の女性グループに有償で委託しており、家賃などの諸費用を含めた利用料は月約14万円。ほかに、約400万円の保証金が必要だ。
一人暮らしの増加
こうした住居形態が関心を集める背景には、一人暮らし高齢者の増加がある。総務省の国勢調査(2005年)によると、「一人暮らしの高齢者(65歳以上)」は405万人。2000年より102万人(33・5%)増えた。今や高齢者の女性の5人に1人、男性の10人に1人が一人暮らしだ。
ただ、老後の一人住まいとなると、有料老人ホームや自宅など、選択肢が限られているのが実情。こうした中、ここ数年、自分たちで生活の場をつくろうという機運が高まってきた。NPO法人「共生のすまい全国ネット」の岡本健次郎事務局長は「自分らしさを求める傾向の強い団塊世代の引退もあり、共生型住まいへの関心は今後ますます強まる」とみる。
看取りも
共生型の住まいには、「健康なうちはいいが、万一の時は……」といった懸念も根強い。
「健康に暮らす」をスローガンに掲げる「COCO湘南台」では早くから、そんな入居者の不安に応える取り組みを進めてきた。
同所の運営母体のNPO法人「COCO湘南」(藤沢市)の理事長で、自らもコーディネーターとして入居する西條節子さん(78)が、医師、ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパーなど地域の医療、福祉の専門職とのネットワークを構築。入居者はかかりつけ医をそれぞれ持つのがルールで、ケアマネジャーや医師らを夕食会に招くなど、「日ごろの努力」(西條理事長)も欠かさない。
04年3月には、胃がんを患っていた小池八重さん(当時83歳)を本人の意思を尊重して看取った。岡本事務局長は、「こうしたケースは、全国でも珍しい」と話す。
ほかの入居者も、在宅での最期を望む小池さんの願いを実現させようと、協力を惜しまなかった。西條理事長は「最期まで生活したいというのが私たちの願い。小池さんのおかげで、ますます“我が家”への安心感が強まった」と話す。
気心の知れた仲間と暮らす共生型の住まいは、生活の場としての利点ばかりが強調されがちだ。しかし、岡本事務局長は、「『ついのすみか』となってこそ、安心して老後を送ることができる」と強調。「そのためには、医療、介護などの地域資源をいかに活用するかがポイント。先進事例を研究するとともに、コーディネーターの育成を図る必要がある」と課題を指摘する。
読売新聞タグ: 福祉住環境
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