有料老人ホーム トラブル防衛策

2006年 06月 28日 (水) | Category : 介護施設

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

契約書の比較検討を


手の届く価格帯が増え、老後の住まいの身近な選択肢となった有料老人ホーム。その一方で、トラブルも増えている。入居を決める際、どんな点に注意したらいいのだろうか。(本田麻由美)


「たった5日間しか入居していないのに、300万円の権利金は全額返せないと言われたんです」


関東地方に住むAさんは、昨年末、県内の消費生活センターに電話し、怒りもあらわにそう訴えた。


入院中だった父親(80)が退院を迫られ、困ったAさんは、ある有料老人ホームに父親を入居させた。初めに支払った入居一時金は、終身利用権利金300万円と保証金200万円。安くはないが、特別養護老人ホームに空きはなく、提携病院で医療対応もすると聞いて決断した。


だが、父親は入居してすぐ、胃に管を通す手術を受けるため10日間入院。ホームに戻った数日後に容体が急変し、緊急入院した病院でそのまま亡くなった。


「ホームにいたのは5日間だけ。支払った計500万円から5日分を引いた残金を返してほしい」。Aさんの求めにホーム側は、「入院時を含め部屋は2週間確保した。権利金は、契約書で入居後7日を経過したら一切返金できないとしている」と拒否。保証金は「入居2年に満たない場合は返金するが、2年後に返す」と回答してきた。


「不当だ」とのAさんの訴えを受け、相談員が交渉。権利金は半額戻ることになったが、ホーム側は「保証金は2年後」と譲らず、Aさんは「事を長引かせたくない」と受け入れた。


事態を重くみた厚生労働省は、4月からホーム側にサービス内容や費用などの情報開示を義務付け、重要事項説明書で一時金の返還率などの明示も求めた。また、新たに開業するホームには、倒産時に備え一時金を最大500万円まで保全することも義務化。設置運営指導指針で、7月からは「契約時から90日以内の解約は(利用期間の利用料等を除き)一時金の全額を返還すること」としている。


これに対し、消費者契約に詳しい東京経済大教授の村千鶴子弁護士は、「契約内容の適正化と消費者保護を図るため、一時金の償却期間など必要と思われるものは法で基準を定めるべきだ」と強調。現時点でのトラブル防衛策としては、「見学前に重要事項説明書や契約書をよく比較検討すること」を挙げる。また、今夏以降、ホームの情報が都道府県のホームページで公表される予定であることから、木間さんは「退去者数や退去先を見れば、介護の質も分かる」とアドバイスしている。


読売新聞
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