有料老人ホーム 入居の時期

2006年 06月 20日 (火) | Category : 介護施設

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。

2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。

わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。

人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。

そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。

介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。

今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。

生活設計をしっかり


「老後の住まい」の選択肢として注目される有料老人ホームだが、自宅からの住み替えの時期について悩む人は多い。入居後の生活設計や資金計画をしっかり立てておくことが、上手に住み替えるコツといえそうだ。(小山孝)


目的と資金計画


神奈川県内に住む男性(74)は最近、有料老人ホームの入居契約を結ぶ直前にキャンセルした。妻を亡くし、一戸建てに一人住まい。結婚した娘は遠方にいる。「今は健康だが、先々のことを考えると心配。ホームに入ろうと思ったが、サービスが良すぎると、かえって生活意欲が衰えるような気がして……」と住み替えのタイミングの難しさを話す。


東京都内で暮らす女性(67)も悩みは同じ。夫と二人暮らしで、数年前からホームを探す。「元気な時は、『入居はもう少し先でも』と思うが、ちょっと病気をするとあせってしまう」


15年前から、高齢者向け住宅の情報提供・相談に応じているNPO法人「シニアライフ情報センター」(東京都渋谷区)によると、生活に不安を感じる70歳前後から住み替えを考える人が多い。早めに住まいを移せば新しい友人が出来る可能性もある。だが、「早めの住み替えが誰にとっても良いとは限らない。老後の暮らしのイメージや転居の目的をはっきりさせておくことが大事です」と、同センター事務局長の池田敏史子さん(61)は強調する。


元気なうちからの入居をうたっているホームも、実際に入居してみると、周りが要介護者ばかりで生活を楽しめないこともある。


また、ホームに入れば食事や入浴など様々なサービスが提供されるため、人任せの生活になり、急に心身が衰える場合もある。「自由時間が増えるため、趣味がないと時間を持て余してしまうことも」と池田さん。


さらに、将来に備えて元気な人が入居する場合、居室や共用部分にそれなりの空間が必要なため、入居一時金が数千万円かかることもある。「資産の大半を処分して入居した場合、生活を切り詰めざるを得ない。元気なうちに楽しめるはずの旅行や買い物を我慢することにもなりかねません」


一方、早めの住み替えが適していると考えられる人もいる。一人暮らしで、家事や自己管理が苦手な人や、孤立感が強い人などだ。


60代になったら


住み替えにあたっては、自己資金についても、よく検討しておく必要がある。75歳で自宅から転居した場合の経済的負担をセンターが試算したところ、いったん高齢者向け賃貸住宅などで在宅介護を受けながら生活し、要介護度が悪化した段階で入居金が数百万円台の介護付き有料老人ホームに移る方が、初めから居室や共用部分が広い有料老人ホームに入るより負担は低いという結果が出た。


「以前は『自宅から介護施設へ』という選択肢しかなかったが、最近は高齢者専用の賃貸住宅などが出来、そこを経由する住み替えパターンも増えてきた。元気な時から入居するのか、認知症など介護が必要になってから移るのかでは、生活も費用もまるで違ってくる。60代になったら、考え始めた方がいいでしょう」と池田さんはアドバイスしている。


読売新聞
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