長崎・グループホーム火災の教訓
「街なか」につくり、地域と連携強化を
長崎県大村市で7人のお年寄りが亡くなった認知症(痴呆(ちほう))高齢者グループホームの火災は、小さな介護拠点が主流になる中で、非常時にお年寄りの安全をどう守るかという課題を浮き彫りにした。(社会保障部・安田武晴)
火災は8日未明、市の中心部から約3キロ離れた郊外の丘陵にある「やすらぎの里さくら館」で発生した。鉄筋コンクリート一部木造平屋建て約280平方メートルを全焼し、入居者9人のうち7人が死亡した。原因はまだわからない。
グループホームは、認知症の高齢者が、職員から介護を受けながら5~9人で共同生活をする介護保険のサービスだ。特別養護老人ホームなど大きな施設より初期投資が少ないことや、地域の中で暮らすという考え方が支持されて急増した。施設の小規模化は高齢者介護の一つの流れになり、現在、全国に約7600ある。数が増えるにつれて、火災が起きた「さくら館」のように、近くに人家がないところに建設されている例も出てきた。
今回の火災は、夜勤時は1人になるなど、職員が少ない小規模施設の安全対策の手薄さを露呈した。職員数の増加は介護費用や入所者の負担増につながるために難しく、火災などが起きた場合、入居者をいかに早く避難させるかの問題を提起した。
「日ごろから、近所の住民と関係を深めておくことが重要だ」。新潟県長岡市で3か所のグループホームを運営する「高齢者総合ケアセンターこぶし園」の小山剛施設長は、そう指摘する。
こぶし園では、普段から町内会との交流を重ね、施設にはどんなお年寄りが何人いるのかなどを知ってもらうようにしている。この努力が実って、一昨年の新潟県中越地震の際には、発生直後に近所の人々が駆けつけてくれた。
地域との信頼関係ができれば、住民の協力を得て避難訓練を行うなど、より発展した緊急対応の仕組みを作ることも可能となる。
グループホームは、安全面からも、地域の中で暮らすという狙い通り、街なかにつくる配慮が必要といえる。
もちろん、防災設備の整備も必要だ。消防法の施行令では、福祉施設の場合、延べ床面積6000平方メートル以上(自力で避難することが困難な入居者がいる場合は1000平方メートル以上)の建物には、スプリンクラーの設置が義務づけられている。だが、規模が小さいグループホームの場合、ほとんど設置されていないようだ。「さくら館」にもなかった。「ケアが優先で、火災時の対応を普段から真剣に考えるホームは少ない」(関東地方のグループホーム職員)との声もある。
総務省消防庁は10日、グループホームなどの防火安全対策の検討会の設置を決めた。スプリンクラーの設置義務化などが検討される。ホームに過度の負担を強いない配慮は必要だが、安くて簡易型の自動消火装置を自主的に付けている施設もあり、そうした試みは参考にすべきだろう。
認知症高齢者は現在約170万人にのぼる。2030年には約350万人まで増えると推計される。グループホームは、人間らしく暮らそうとする認知症の高齢者ばかりでなく、知的・精神障害者向けにも整備が進められている。今回の火災を教訓に非常時の安全確保を早急に進める必要がある。
グループホームとは…個室が原則で家庭的 介護・支援受け共同生活
認知症の高齢者向けのグループホームは、1980年代半ばにスウェーデンで誕生したといわれる。日本でも90年ごろから設立され始めた。97年度に国が制度化したのを契機に増え始め、介護保険制度の導入で一気に全国に広がった。通常は街の中にある。一般の住宅に近く、個室が原則で、職員から介護や生活支援を受けながら共同生活をする。
少人数で家庭的、生活のプライバシーが守られるなどのグループホームの利点は、他の介護サービスにも広がりつつある。介護保険制度では、新年度から、通所介護などと宿泊サービスを提供する「小規模多機能型居宅介護」などが導入される。
一方、知的、精神障害者向けのグループホームは日本では80年代に開設され始めた。4月に施行される障害者自立支援法でも、中心的なサービスに位置づけられている。
読売新聞タグ: グループホーム
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