老後の住まい~介護や看護が必要な人が入れる施設(3)

家族や友人を忘れてしまったり、問題行動を起こしたりする「認知症(ぼけ)」は、単なる老化現象の「物忘れ」とは違います。85歳以上では4人に1人と言われていますし、平成12年の介護サービス施設・事業所の調査によると、介護保険を利用している人の約71%が認知症。にもかかわらず、介護サービスは身体介護が中心で、認知症患者の面倒を見る家族は大変な負担を強いられています。


認知症の症状が進んで、徘徊、幻覚、暴食、失禁などの問題行動が起きるようになると、24時間目が離せなくなり、在宅での介護は難しくなります。また、高齢者施設などに入っていても、認知症がひどくなれば退去しなければならない場合もあります。そういうときには、どういう受け入れ先があるのでしょうか。


認知症専門の施設として、「グループホーム」があります。食事づくりや掃除、洗濯、家庭菜園や庭木の手入れなどの家事を入居者と一緒に行いながら、少人数で家庭的な雰囲気の中で生活します。5~9人が1単位(ユニット)になり、1ユニットのみの小さな施設もあれば、複数のユニットを持つ施設もあります。


ユニットごとに扉に暗証番号をつけるなどして、徘徊などで外に出て行かないようにしているところが多いのですが、そのために逆にユニット内では、自由に歩き回れるようです。買い物や散歩などで、入居者を積極的に外へ連れ出す施設、病院へ通院する必要があれば付き添う施設など、施設管理者の考え方によって、運営方針も異なります。ただし、慢性疾患などで定期的な通院が必要な人は、受け入れないとしている施設もあります。


グループホーム同様に認知症専用のフロア(ユニット)があるのが、一部の「介護専門(介護型)有料老人ホーム」です。同じフロアに認知症患者を集めているので、認知症専門のケアができることがメリット。費用は高くなりますが、介護施設の基準より職員を多めに配置して、より手厚いケアをする施設もあります。


グループホームと有料老人ホームは、原則としてどちらも個室です。どちらがいいか選ぶ基準になるのは、施設の良し悪しだけではありません。実際にケアの現場で働いている人の話では、少人数で家庭的なグループホームでは落ち着けず、多くの人がいる(通常入居者はワンフロアに十数人~30人程度)有料老人ホームの方が性に合うという人もいるそうです。


特別養護老人ホームや老人保健施設も、受け入れ先の候補になります。どちらも相部屋なら比較的費用が安く済むのですが、待機者が多く、簡単には入居できません。また、老人保健施設は原則として短期滞在であること、などの問題もあります。


なお、慢性疾患などで長期療養が必要なら、療養型病床(11月のコラムご参照)も選択肢になります。また、あまりに症状がひどければ、精神病院へ入院することになる場合もあります。


(掲載した費用は、要介護度5の場合の平均的な金額で、同じ種類であっても、施設ごとに異なる)


●グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
要介護認定を受けている認知性の人が入居できる。5~9人程度の少人数を一単位(1ユニット)として、家庭的で穏やかな雰囲気の中で生活することで、認知症状の進行を穏やかにする。食事・入浴・排泄等の介護サービスを提供。すべて個室だが、トイレ・洗面所・風呂などは共用。介護保険の自己負担(4万円弱)のほか、家賃、光熱費、食費、その他雑費で6万~15万円、合計で毎月の支払いは10万~19万円程度。入居時に、数十万円から数百万円の敷金や一時金が必要な施設もある。


●介護型(介護専門)有料老人ホーム(特定施設入所者生活介護)
認知症の受け入れやケアレベルは、施設により大きく異なる。健康型の居室を併設している老人ホームなら、夫婦どちらかが認知症でなくても、夫婦で同じ施設に入れる(ただし夫婦別室になる場合も)。認知症専用のフロアを設け、グループホームのようなケアを行なっている施設もある。介護型の場合、月々の支払いは介護保険の自己負担(4万円弱)を含め、25万から35万円程度。比較的症状が重い認知症患者を受け入れる施設なら、別途、数百万円~数千万円の入居一時金(介護一時金)が必要。


●特別養護老人ホーム:特養(介護老人福祉施設)


●老人保健施設:老健(介護老人保健施設)
要介護認定を受けている認知症の人が入れるが、人気が高く、入居待ちが多い。老人保健施設の中には、認知症専門棟を設けているところもある。介護保険の自己負担と居住費、食費で、特養は8万1000円、老健は8万3,000円(どちらも相部屋の場合)。個室の場合は、施設によって10万~20万円。所得により、これらの負担額は減額される。施設概要は10月のコラムをご参照。


治療をスムーズに行なうため、あるいは他の患者や入居者に迷惑をかけないため、ベッドに縛りつけるなどの拘束が日常的に行なわれている病院や施設があるという話しも聞きますが、だんだんと認知症の研究や理解が進み、「プロによる認知症ケア」が行なわれる病院や施設も増えてきています。


費用の問題もありますが、一番重要なのは、入居する本人に合う場所かどうかです。緊急避難的に決めてしまうのではなく、いろいろな施設等を見学してから決めるのがいいでしょう。とはいえ、(認知症に限りませんが)介護の場はどうしても閉鎖的になりがちです。入居してからもこまめに訪問し、本人に合わなかったり、施設等の対応に不信感を抱いたりしたときには、早めに別の施設等に移ることを検討しましょう。


毎回、いろいろな施設等をご紹介してきましたが、高齢者の住まいや介護関連施設・病院の場合、個々の違いが大きいため、特別養護老人ホームが良くて、有料老人ホームは良くない、というように種類で良し悪しを決めることは無意味です。そこではどのようなサービスやケアが提供され、どのような生活ができるか、という視点で、入居する(させる)前に見学を行ったり、まわりの評判を聞いたりして、情報を集めてください。


読売新聞
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